Back


シャボン玉


ひたすら自分を護るため
ひとを信じることもせず
ひとを愛することもせず
ひとを疑うことばかり
ひとを泣かせることばかり

そうやって重ね続けたこの膜が
知らずのうちにこんなにも
厚く重たくなっていて

気がつくと
ぼくは一個のシャボン玉

広い青空見渡すと
空には無数のシャボン玉
軽々と風に吹かれて
みんなが空を高く舞い
弾けて空へと還るのを
ぼくはただただ見上げるだけで
高く昇ってゆくことも
空へと還ってゆくことも
できず漂うシャボン玉

膜を隔てて伝わってくる
風はとても柔らかく
陽射しはとても暖かく
みんなが還ったその空は
やさしくぼくを包み込み
ぼくが空へと還るのを
そっと見守り続けてる

だから辛くはないけれど
やさしさに満たされた空
その中を漂うぼくは
寂しい一個のシャボン玉

ぼくらもきみを
支えているよ、と
みんなが見守る孤独の中で
膜を重ね続けてた
自分をそっと省みる

自分とまわりを隔てる膜を
あまり重ね続けると
厚くて重たいその膜が
薄れて空へと還るにも
長い時間がかかるから
それにかかる時間の分だけ
寂しい思いをするのだと

気付きは膜を少しづつ
薄れさせてゆくようで
いつになるかは
知らないけれど

みんなが還ったその空へ
やさしく見守るその空へ
いずれ弾けて還るまで
漂うぼくはシャボン玉

いずれ弾けて還ること
信じるぼくはシャボン玉


>> Next

Back